BEIR VII報告をICRP2007年勧告と比較して考えたこと

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 ICRPの防護措置は内部被曝の影響を十分に考慮に入れて
いないといった見解をECRR2010年勧告の中に認めること
ができるといった議論があるが、ここでは2005年における
BEIR VII – Phase2の一部を訳すことから始めたい。以下に
URLを記す。
http://www.nap.edu/openbook.php?isbn=030909156X

低レベルの電離放射線の被曝による健康リスク

BEIR VII フェーズ2

一般向け概要

低線量の電離放射線の意味は何か

このレポートでは、委員会は低線量を低LET放射線における
ほぼゼロから約100mSv(0.1Sv)までの範囲における線量とし
て定義する。委員会は関連するデータが利用可能である最も
低い線量を重視した。世界における低LET放射線の年間自然
被曝量は約1mSvになる。

委員会により審査された研究

委員会が審査した論文のいくつかは、低線量被曝がLNTモデ
ルの結論が示唆するより有害であるといった議論を含んでい
た。BEIR VII委員会は、放射線の健康への影響の研究は全体
としてこの見解を支持しないと結論づけた。本質的には、委
員会は、線量が高ければリスクは大きく、線量が低ければ、
人間の健康に対し害を及ぼす可能性は低くなると結論づける。
この結論の理由について考えるための幾つかの直感的な方法
がある。まず、電離放射線の一回の放射は細胞にダメージを
与える可能性がある。しかし、もし1つだけの電離粒子が細胞
のDNAを通過するならば、細胞のDNAに対するダメージの可
能性は仮に10、100、1000に及ぶ電離粒子が通過する場合より
比例的に低くなっている。放射線と細胞のDNAとの物理的相
互作用から低線量でより大きな影響を期待する理由はない。

つまり放射線の健康への影響の評価に関連した研究の全体像
は、低線量の低LET放射線に関連したリスクはLNTモデルに
基づいて予想される以上に大きくないことを信じるための説
得力のある理由を提供している。

なぜ委員会は、低線量がLNTモデルによって推定されるより
実質的に有害でないといった見解を受け容れないか。

前段のセクションのテーマと対照的に、委員会に提供される
いくつかの論文は、LNTモデルは低レベルの電離放射線の健
康への影響を誇張していると示唆している。それらは、リス
クがLNTで予測されるより低く、そのリスクは存在しないか
もしくは放射線の低線量は有益でさえあるかもしれないと述
べている。委員会は同様にこの仮説を許容しない。代わりに
委員会は、大半の情報が低線量でさえいくらかのリスクがあ
ることを示していると結論づける。この一般向け概要におけ
る簡単なリスク計算が示すように、低線量でのリスクは小さ
いながらも存在するだろう。それにもかかわらず固形腫瘍に
対する委員会の主なリスクモデルは、線量の減少に伴い、癌
発生率において線形に減少することを予測している。

疫学データと生物学的データの双方は、関連が測定されうる
線量での線形モデルと一致している。電離放射線の健康への
影響を示す主な研究は、1945年の広島と長崎における原爆の
生存者を分析したものになる。これらの生存者の65%が低線
量の放射線を被曝し、それはこのレポートで用いられる定義
によると低いものになる(100mSvと同等もしくはそれ以下)。
閾値や有益な健康への影響を肯定する議論はこれらのデータ
によって示唆されていない。疫学における他の研究もまた電
離放射線の有害性は線量の関数であるといった見解を支持し
ている。さらに子宮内でもしくは早期の段階で被曝した子供
における癌の研究は、低線量で放射線により誘発された癌が
発生しうるといったことを示唆している。例えば小児癌のオ
ックスフォード調査は"15才までの子供たちの間における発
癌率が40%増加する"ことを見出し、この増加は10〜20mSv
のレンジにおける線量で発見されたものである。

 一般向け概要の抜粋のみから意見を引き出すことはフェア
ではないと感じることがあるが、メディアを眺める限り、こ
れと異なった見解が大手をふるっているようだと考えること
があったのは、現在議論を重ねている問題だからだといった
見方に加えて、既存の権益構造が果たした役割も無視できな
いだろうと考えることがある。

 ここでの委員会とは、Committee to Assess Health Risks
from Exposure to low Levels of Ionizing Radiation, National
Research Councilになり、あえて訳さなかったが、いずれに
せよ、求められるものは被曝線量を低下させる措置であり、
そのために除染が必要とされているのだろうと考えることが
あった。

 実際の所、内部被曝の影響と低線量被曝の影響を十分に考
慮するために必要とされるものがまだ多く残されているのだ
ろうと考えることがあり、通常の緊急事態はこのように長期
化することを想定されていないだろうから、それに応じた施
策といったものが求められるのだろうと考えることがあった。
この続きはまた機会が許すときに記すことにする。

 明日もがんばろう。

 では。

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2016・11・15 改訂
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この記事について

このページは、Suzuki TakashiがMay 4, 2011 12:41 AMに書いた記事です。

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