欧米において原発はどのような論点で語られ、WHOのFAQを通じて現在の日本はどう把握されているかについて一考察

| コメント(0)

以下の論点はPROS and CONSの原子力エネルギーの項目からの
抜粋の一部を日本語に置き換えたものである。

チェルノブイリ原発事故の背景として生産性の追求によって安全
基準が犠牲にされたことによる安全基準の杜撰さといったことが
挙げられ、安全管理と手続きが厳格であればそうはならないとの
議論があった。

また原子力利用に付随してお役所主義と秘密主義に起因する様々
な問題が挙げられ、それは軍事技術に転用されることを恐れての
話になるが、これらは過去の問題であるとも言われていた(実際
は違っていたのだが..)。

しかしチェルノブイリ原発事故の12年後においてもスコットラン
ドの原野は危険な程度において汚染されており、また英国の管理
下にあるとはいえ、セラフィールド等の発電所や再処理施設周辺
では白血病の危険性が問題視されていた。

そして1950年代において原子力は安価であると約束されてきたが、
今日依然として原子力は納税者による補助を必要としている状況
であり、古い発電所は解体に100年と数十億のコストが必要であ
ると言われている。

他方、過去代替エネルギーの利用は非効率であると言われてきた
が、政府が代替エネルギーの研究開発に対し大規模に着手すれば、
それらの効率性と安全性は著しく改善するとも言われてきた。

ここに現在の福島の問題が加わることになるのだろう。どう現在
の福島が把握されているのか、WHOの水質ガイドラインに対す
るFAQを通じて眺めてみたい。以下の文章はその抜粋の一部の訳
文になり、URLは以下に示される。
http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index8.html

日本で水道水を飲むことは可能か。

・日本当局は入念に状況をモニタリングし、必要とされるとき、
 水道水の消費に対し助言しており、これは幼児に対する特定の
 勧告を含むものである。幼児に不可欠な水の摂取は放射性核種
 汚染に対する被曝量を減らすことを意図してそこなわれるべき
 ではない。

・この緊急事態に対し日本の当局によって採用された基準は注意
 を要するものである。現在、放射性ヨウ素は最もよく見受けら
 れる汚染物質である。成人に対する基準は飲料水1リットルあ
 たり300ベクレルである。このレベルで1年中飲料水が汚染され、
 消費されるといった起こりそうもないシナリオを採用すると、
 この水からの追加的な放射線被曝量は1年間における自然環境
 から受ける被曝線量と同等になるだろう。

何故飲料水中の放射性ヨウ素131に対する指標レベルが異なるのか。

 勧告の異なったセットの中で見受けられる指標レベルはそれぞ
 れ異なり、幾つかは通常の状況にあてはまり、他方は緊急の状
 況にあてはまるからである。以下の表は飲料水中の放射性ヨウ
 素131における指標を纏めており、通常の活動における同等量
 の被曝に関する示唆を与えるものである。(以下、示唆を省略)

 ガイドラインの名前 
 水における放射能に対し助言される最大レベル(Bq/L)

 飲料水の品質に対するWHOのガイドライン(1)   10
 成人に対する日本の暫定的な(緊急の)基準(2) 300
 幼児に対する日本の暫定的な(緊急の)基準(3) 100

 (1) 飲料水の品質に対するWHOのガイドラインは原子力緊急時
 に対する基準点としてとられるべきではなく、設定されたレベ
 ルは甚だしく慎重なものであり、生涯に亘る通常の被曝量にあ
 てはまるようにデザインされている。

 (2) 食べ物や飲み物の摂取における制限に関連した暫定基準
 値は日本の食品衛生法によって設けられており、日本の原子力
 安全委員会によって示されるとおりである。これらの基準は注
 意を要するものであり、国際的なガイダンスを考慮に入れてお
 り、IAEAや国際放射線防護委員会の勧告を含めたものである。

 (3) 上記の(2)と同様であるが離乳食を用意するために使われ
 る飲料水に適用できる。このレベルは離乳食のために国際食品
 規格委員会によって定められた国際的なガイドラインと同等で
 ある。

以上に述べた話は原子力利用とは異なり、放射性物質の拡散に纏
わる話だが、概ね国内の議論と海外の議論が類似していることは
同意して戴けるだろうかと考えている(ただ国内の議論ではある
程度のバイアスが掛かっていることは否めない)。

つまり現状を説明するならば、緊急事態としては仕方がない状況
だが、これが永続することは問題であり、その可能性は低いと見
積もられているが、その保証はないといったことになろうか(こ
れが分かりにくさを誘因している背景になろうか..)。これま
で下手な訳文が続いたが何らかの意味で役立つことがあるならば
幸いである。

明日もがんばろう。

では。

コメントする

My Photo
プロフィール!
2016・11・15 改訂
spacer01
rssspacer01foaf
spacer01
atom.xml
spacer01

この記事について

このページは、Suzuki TakashiがApril 27, 2011 1:08 AMに書いた記事です。

ひとつ前の記事は「日本人のメンタリティとしては許容され難い話だろうが、あらゆるものを変えるために。」です。

次の記事は「原発報道と福島の子供たちについて」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

June 2024

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

月別 アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて